【保存版】サーバー移転をトラブルなく行うための具体的手順と注意点

サーバー移転は一度失敗すると、サイト停止やメール不達など大きな影響が出ます。本記事では、過去にサーバー移転トラブルを経験した担当者でも、次こそ安心して完了できるよう、サーバー移転の準備・手順・確認ポイントをチェックリスト形式で整理しました。

「前回のサーバー移転でサイトが止まり、メールも届かなくなって社内が大混乱だった…」そんな苦い経験がある担当者の方に向けて、本記事ではサーバー移転をトラブルなく進めるための具体的な手順とチェックポイントを、実務の流れに沿って詳しく解説します。サーバー移転は一度きりのイベントではなく、数年おきに発生しうる「定期的なインフラの見直し」です。だからこそ、そのたびに担当者が不安にならないよう、再現性のある手順として整理しておくことが重要です。

ここでいう「サーバー移転」とは、レンタルサーバー会社の変更や、プラン変更に伴う別サーバーへの移行、オンプレミス環境からクラウドサーバーへの乗り換えなどを含みます。ホームページの表示だけでなく、WordPressなどのCMS、メール、各種フォーム、会員機能など、ビジネスに関わるさまざまな要素に影響するため、全体像を把握したうえで計画的に進めることが不可欠です。

サーバー移転でよく起こるトラブルと、その原因

まずは、サーバー移転で実際によく起こるトラブルと、その原因を整理しておきましょう。過去にサーバー移転でトラブルを経験している担当者ほど、「何となく不安だけど、どこから手をつければいいか分からない」という状態に陥りがちです。代表的なトラブルを把握しておくことで、サーバー移転前に重点的に対策すべきポイントや、社内で共有しておくべきリスクが明確になっていきます。

1. Webサイトが表示されない・エラーが出る

サーバー移転後にもっとも多いのが、「サーバー移転後にサイトが真っ白になった」「500エラーが出てしまう」といった表示不具合です。これは、PHPのバージョン差やモジュールの違い、WordPressなどCMSの設定ファイル不備、ファイルの転送漏れやパーミッション設定の誤りなどが原因で発生します。特にWordPressの場合、wp-config.phpの接続情報の書き換え忘れや、一部プラグインが新サーバーの仕様に対応していないことが原因になりやすいです。

また、マルチサイト構成やサブドメインを多用しているサイトでは、ドメインごとの設定やディレクトリ構成が複雑になり、サーバー移転時に設定が抜け落ちることも少なくありません。こうしたトラブルは「本番切り替え前にテスト環境で動作確認を徹底する」「移転対象のサイト構成をあらかじめ可視化しておく」といった対策で、事前にかなりの部分を防止することができます。

2. メールが送受信できない・一部だけ届かない

サーバー移転ではWebだけでなくメールの設定変更も必要になるケースが多く、DNSレコードの切り替えタイミングを誤ると、送信者によっては旧サーバーにメールが届いたまま、新サーバー側では受信できない状態が発生します。MXレコードやSPFレコードの設定ミスも、配信エラーや迷惑メール判定につながるため注意が必要です。「社外のお客様からの問い合わせメールだけ届いていなかった」という事態は、直接的な機会損失につながります。

特に、社内の一部部門だけ別のメールサービスを利用しているような場合、誰がどのメールサーバーを使っているのかを整理せずにサーバー移転を進めると、影響範囲を把握しきれないまま移行日を迎えてしまいます。サーバー移転計画の段階で「メールアドレスの一覧」と「利用中の端末・メールソフト」を洗い出しておくことで、設定変更の漏れを防ぎやすくなります。

3. 画像やダウンロードファイルだけが表示されない

ページ自体は表示されているのに、画像やPDFなどの静的ファイルだけが表示されないケースもよくあります。これは、ファイルパスの違い、マルチドメインの設定漏れ、ファイルの転送漏れ、転送時の文字コード違いなどが原因です。サーバー移転時は、データベースだけでなく、画像や資料ファイル、動画やZIPファイルなどを含めた、すべてのコンテンツのコピーが必要になります。

特に、CMS以外に手動でアップロードしている資料ページや、昔の担当者が個別に作成したランディングページなどは、サーバー移転時に存在を忘れられがちです。「アクセスは少ないページだけれど、特定の取引先だけが使っていたページが見えなくなった」といった事態を防ぐために、事前にGoogleアナリティクスやサーチコンソールなどを参考にしながら、重要なページとファイルの一覧を作っておくと安心です。

4. SEO評価の低下・アクセス数の急落

サーバー移転後に、「ページスピードが落ちた」「SSL設定の不備」「URLが書き換わってしまった」などの要因が重なると、検索順位やアクセス数に影響する場合があります。特に、常時SSL化やwwwあり・なしのリダイレクト設定が変わるケースでは、サーバー移転前後の動作確認が重要です。URLが意図せず変わってしまった場合、リダイレクト設定を行わないと、せっかく蓄積されたSEOの評価が分散してしまいます。

サーバー移転は、インフラ面を見直す良い機会でもあります。移転タイミングで不要なプラグインを整理したり、画像のサイズ最適化を進めたりすることで、逆に表示速度が改善し、SEOにプラスに働くケースもあります。単にサーバー移転を「作業」として捉えるのではなく、「サイト全体の健康診断のタイミング」として活用できると理想的です。

これらのトラブルの多くは、綿密な事前準備とサーバー移転手順の見える化によって、かなりの割合を防げます。次の章では、サーバー移転の事前準備をチェックリスト形式で整理していきます。

サーバー移転前に必ず行うべき準備チェックリスト

サーバー移転の成否は「事前準備」で8割が決まると言っても過言ではありません。準備が不十分なまま日程だけ先に決めてしまうと、移行直前になって慌てて情報を集めることになり、結果としてトラブルのリスクが高まります。ここでは、サーバー移転を検討中の担当者が、移転前に必ず確認しておきたいポイントを一覧で整理します。印刷してチェックしながら進めると、チーム内での共有もしやすくなります。

1. 現在のサーバー環境と契約内容の把握

現在利用中のサーバー会社・プラン名・契約更新日
ディスク容量・データベース数・ドメイン数・メールアカウント数
PHP・MySQLなどのバージョン、使用中モジュール
常時SSL（https）対応の有無と証明書の種類
自動バックアップ機能の有無と取得タイミング

これらを把握しておくことで、移転先のサーバーで必要なスペックや機能が明確になります。特に、WordPressで構築されたサイトの場合は、PHPやデータベースのバージョン差がサーバー移転後の不具合に直結しやすいため、注意して確認しましょう。可能であれば、現在利用しているプラグインやテーマの一覧も控えておくと、トラブル発生時の切り分けに役立ちます。

2. 移転先サーバーの選定とテスト環境の準備

サーバー移転先として、表示速度や安定性、バックアップ機能、WAF（Webアプリケーションファイアウォール）などのセキュリティ機能を備えたレンタルサーバーを選びましょう。料金だけで決めるのではなく、「将来的にアクセス数が増えた場合にも耐えられるか」「電話やチャットなどのサポートが受けやすいか」といった観点も重要です。社内でIT担当者が少ない場合ほど、サポート体制がしっかりしているサーバー会社を選んだ方が安心です。

プランが決まったら、本番移行の前に「テスト用ドメイン」や「サブドメイン」でサーバー移転の動作検証を行うことをおすすめします。テスト環境を用意しておけば、本番のサーバー移転作業がスムーズになるだけでなく、社内で「どこまで準備が進んでいるか」を共有しやすくなります。

サーバー移転前にテスト環境で動作確認している様子 — いきなり本番でサーバー移転を行わず、テスト環境で不具合を洗い出すことがトラブル防止の近道です。

3. サーバー移転のスケジュール設計と関係者への共有

サーバー移転は、アクセスの少ない時間帯や休日に実施するのが基本です。リスクを抑えるために、次のような観点でスケジュールを決めましょう。

サーバー移転の作業日と、トラブル時の予備日をセットで決める
DNS切り替えのタイミングと、最大24〜72時間の浸透期間を考慮した周知
社内担当者・経営者・関係部署への事前説明と、緊急連絡手段の確認
外部パートナー（制作会社・システム会社など）との役割分担と連絡窓口の明確化

特に、メールシステムもサーバー移転の影響を受ける場合は、「この時間帯にメールが届かない可能性があります」といった案内を社内外に事前共有しておくことが重要です。サーバー移転当日に慌てないよう、「想定されるトラブル」「もし起きた場合の対応イメージ」を事前に整理しておくと安心感が違います。

4. バックアップとロールバック（元に戻す）手段の用意

サーバー移転における最重要ポイントが「バックアップ」です。トラブルが起きた際に、すぐに元のサーバー環境に戻せるよう、次のバックアップを取得しておきましょう。

Webサイトの全ファイル（画像・CSS・JS・PDF・動画などを含む）
データベース（MySQLなど）のダンプファイル
メールボックスのデータ（必要に応じて）
DNSレコード設定のスクリーンショットやエクスポート情報
htaccessや独自設定ファイルなど、カスタマイズ部分の控え

バックアップは、同じサーバー上だけでなく、ローカルPCや別のクラウドストレージにも保存しておくと安心です。また、「どこまで戻せば元の状態になるか」「どの順番で復旧作業を行うか」を作業メモに残しておくと、サーバー移転中に判断が迷いにくくなります。ロールバック手順が明確になっていれば、精神的な負担もかなり軽くなります。

実際のサーバー移転手順：3ステップで見る流れ

ここからは、サーバー移転の具体的な流れを3ステップに分けて解説します。サーバー移転の内容はサイトの構成によって多少変わりますが、基本の考え方は共通です。チェックリストと照らし合わせながら進めてみてください。なお、ここではWordPressを利用した一般的な企業サイトを想定したサーバー移転手順を例にしています。

ステップ1：旧サーバーからデータを取得する

旧サーバーの管理画面にログインし、対象ドメインを確認する
WebサイトのファイルをFTPソフトやファイルマネージャーで一括ダウンロード
データベース管理画面（phpMyAdminなど）から、該当データベースをエクスポート
必要に応じて、メールデータや独自アプリケーションの設定ファイルをバックアップ
バックアップ一式を、社内共有ストレージなど安全な場所に保存しておく

サーバー移転の前に、サイト内の不要ファイル・不要プラグインを整理しておくと、移行後のトラブルが減り、表示速度の改善にもつながります。また、バックアップの容量が小さくなるため、サーバー移転作業自体もスムーズになります。日常的なメンテナンスとサーバー移転は切り離せない関係にある、と意識しておくとよいでしょう。

ステップ2：新サーバーへデータを転送し、サイトを仮公開で確認する

新サーバーにドメインを設定し、初期設定を完了させる
新サーバー上にデータベースを作成し、旧サーバーのダンプファイルをインポート
FTPなどを使って、旧サーバーからダウンロードしたファイルを新サーバーへアップロード
WordPressなどCMSを利用している場合は、設定ファイル（wp-config.phpなど）の接続情報を新サーバー用に書き換え
hostsファイルの書き換えやテスト用URLを使い、新サーバー側のサイト表示を確認

この段階では、まだDNSの切り替えを行わず、新サーバーを「裏側」で確認するイメージです。レイアウト崩れやプラグインエラー、フォームの送信、会員ログイン、検索機能など、サーバー移転後に問題になりやすい箇所は重点的にテストしましょう。社内の複数端末・複数ブラウザで確認しておくと、環境依存のトラブルも見つけやすくなります。

ステップ3：DNSを切り替えて本番サーバーを新サーバーにする

DNSレコード設定画面にアクセスする（ドメイン管理会社 or サーバー管理画面）
Aレコード・MXレコードなどを、新サーバーのIPアドレス・メールサーバー情報に変更
TTL（有効期限）の設定を事前に短くしておくと、反映が早まりやすい
DNS切り替え後、旧サーバーと新サーバーのアクセス状況・メール状況を数時間〜数日モニタリング
問題がなければ、一定期間経過後に旧サーバーを解約する

DNSは一度変更すると、世界中のサーバーに徐々に情報が行き渡るため、「ある人からは新サーバーが見えているが、別の人からはまだ旧サーバーが見えている」という状態がしばらく続きます。この期間中は、旧サーバーをすぐに解約せず、最低でも1〜2週間は併用しておくと安全です。特にメールは、DNS浸透の影響を受けやすいため、しばらくの間はログをこまめに確認しておくと安心です。

サーバー移転後に必ず行うべき確認ポイント

サーバー移転が完了したように見えても、実は細かな不具合が残っていることがあります。サーバー移転後は、以下のポイントをチェックし、できればチェックリスト化して複数人で確認することをおすすめします。サーバー移転直後だけでなく、1週間・2週間と時間を空けて再チェックすることで、徐々に表面化してくる問題にも気づきやすくなります。

1. 主要ページ・重要導線の表示確認

トップページ・会社概要・お問い合わせ・サービスページなど主要ページの表示
フォーム送信（お問い合わせ・資料請求・予約など）が正常に動作するか
会員サイトやログイン機能がある場合、その動作確認とログアウトまでの一連の流れ

特にお問い合わせフォームの不具合はビジネス機会の損失につながるため、テスト送信を行い、メールが届くかどうかまで必ず確認してください。可能であれば社外のアドレス（Gmail・Yahooメールなど）からの問い合わせも試し、「お客様側の環境から見た動作」を確認しておくと安心です。

2. 画像・ダウンロードファイルのリンク切れチェック

サーバー移転時に、画像やPDFのファイルパスが変わってしまうケースがあります。目視確認に加え、クローラーツールなどを活用してリンク切れをチェックすると効率的です。サーバー移転後1〜2週間は、アクセスの多いページを重点的に確認しましょう。特に、営業資料や料金表など、日常的にお客様へ案内しているファイルは、個別に確認しておくことをおすすめします。

3. メールの送受信・迷惑メール判定のチェック

社内外の複数アドレスを使って、メール送信・受信のテストを行います。Gmailなど外部サービスへ送ったメールが迷惑メールに入らないかもチェックしましょう。場合によっては、SPFレコードやDKIM設定など、送信ドメイン認証の見直しが必要になる場合もあります。最近は迷惑メール対策が強化されているため、サーバー移転をきっかけにメール周りの設定を整えることは、大きなメリットになります。

4. サイト表示速度やSSL設定の再確認

サーバー移転の目的が「表示速度の改善」であるケースも多いため、移転前後でページスピードを比較しておくと効果が見えやすくなります。また、httpsが正しく表示されているか、httpアクセスがhttpsにリダイレクトされるかも確認しておきましょう。ブラウザのアドレスバーに「保護された通信」と表示されているかどうかも、お客様にとっての安心材料になります。

トラブルなくサーバー移転を終えるための3つのコツ

最後に、サーバー移転をトラブルなく完了させるための実践的なコツを3つにまとめます。過去にサーバー移転で失敗した経験がある担当者ほど、ここを徹底することで安心感が大きく変わります。「技術的に詳しい人がいないから不安」という場合も、ポイントを押さえておけば、外部パートナーとのコミュニケーションが取りやすくなります。

1. 作業手順を「見える化」し、チェックリスト化する

サーバー移転は、一人の頭の中だけで進めると抜け漏れが発生しやすくなります。事前準備からサーバー移転後の確認まで、ひとつの表にまとめたチェックリストを作成し、「誰が・いつ・何をするか」を明文化しておきましょう。チェックリストは、Excelやスプレッドシートなど、チームで共有しやすい形式にしておくと便利です。過去のトラブル内容もメモしておくと、次回のサーバー移転時の貴重な社内ナレッジになります。

2. 「止まっても困らない時間帯」にサーバー移転を行う

サーバー移転作業は、どうしても一時的にサイトやメールが不安定になる可能性があります。アクセスの少ない時間帯や、ビジネスへの影響が小さい時間帯を選び、サーバー移転予定を社内・関係者に共有しておきましょう。必要に応じて、「サーバー移転のため一時的に表示が不安定になる可能性があります」といった告知バナーをサイトに表示するのも有効です。事前に一言添えておくだけでも、万が一のトラブル時にお客様からの印象は大きく変わります。

3. 自社だけで不安な場合は、制作会社や専門業者に相談する

サーバー移転は技術的な要素が多く、担当者一人で抱え込むと心理的な負担も大きくなります。WordPressやサーバー構築の経験が豊富な制作会社・運用会社にサーバー移転のサポートを依頼することで、トラブルリスクを大きく減らすことが可能です。特に、複数ドメイン運用や、予約システム・会員機能などを含むサイトでは、専門家のサポートを受けることをおすすめします。

「どこまでを自社で行い、どこからを外部に任せるか」を最初に決めておくと、費用もスケジュールも見通しが立てやすくなります。サーバー移転を機に、保守・運用体制全体を見直し、「担当者一人に依存しない仕組み」に変えていくことも、長期的なリスク対策として有効です。

まとめ：次のサーバー移転は「怖くない」状態で迎えましょう

サーバー移転は、一度トラブルを経験すると「もう二度とサーバー移転はしたくない」と感じてしまう担当者も多い領域です。しかし、事前準備・手順の見える化・ロールバック手段の確保という3つのポイントを押さえれば、サーバー移転のリスクは大きく下げられます。むしろ、サーバー移転のたびにサイトやメール環境を見直すことで、セキュリティや表示速度が向上し、ビジネスにとってのプラス効果も期待できます。

本記事で紹介したサーバー移転のチェックリストや手順を、自社用にカスタマイズして使っていただければ、次のサーバー移転は「何となく不安」ではなく、「準備はできている」という安心感の中で進められるはずです。担当者一人で抱え込まず、社内・社外を巻き込みながら、スムーズで安全なサーバー移転を実現していきましょう。

「自社だけでサーバー移転を進めるのは不安」「現状のサーバー選定から相談したい」という場合は、専門家への相談も選択肢に入れてみてください。サーバー移転だけでなく、表示速度やセキュリティ、今後の運用まで含めたトータルの見直しにつながります。

サーバー移転やホームページの運用でお困りの担当者様は、こちらのフォームからお気軽にご相談ください。状況を丁寧にヒアリングしたうえで、最適なサーバー移転プランをご提案いたします。